年金プラス2000万円。支出の根拠がおかしい
金融庁 年金だけでは足りないから2000万円貯蓄しておくようにの報告書ですが
どうやって2000万円貯めろっていうんだとか年金詐欺じゃないのかとかいろいろ非難されています。
報告書には総支出額263,718円/月に対して収入209,198円/月では月5万円ほど足りないので年間60万円不足。それの30年分ということで1800万円不足。約2000万円不足という内容なのですが1800万円を約2000万円といってしまうセンスが庶民感覚から離れていますが、総支出額263,718円/月もほんとうにかかるのでしょうか?
これを検証してみます。
関連記事:年金に限界!貯蓄2000万円必要の続きです
金融庁は2019年6月3日、『高齢社会における資産形成・管理』の報告書を取りまとめ、夫が65歳以上、妻が60歳以上の夫婦が30年間、ほぼ年金に頼る生活を送った場合、約2000万円が不足するという試算を示した。
https://www.fsa.go.jp/index.html
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf
総支出額263,718円/月もほんとうにかかるのか?
実際の報告書のPDFには図が掲載されています。
高齢夫婦無職世帯の収入・支出
○ 引退して無職となった高齢者世帯の家計は、主に社会保障給付により賄われている。
○ 高齢夫婦無職世帯の実収入と実支出との差は、月5.5万円程度となっている。
支出 | |
---|---|
食料 | 64,444円 |
住居 | 13,656円 |
水道光熱 | 19,267円 |
家具・家事用品 | 9,405円 |
被覆および履物 | 6,497円 |
保険医療 | 15,512円 |
交通通信 | 27,576円 |
教育 | 1,500円 |
教養娯楽 | 25,077円 |
そのほかの消費支出 | 54,028円 |
非消費支出 | 28,240円(税金と社会保険) |
(実支出26,3718円 うち消費支出23,5477円) |
PDFには(出典)第 21 回市場ワーキング・グループ 厚生労働省資料とあります。
金融庁は厚生労働省の資料を参照
金融庁から厚生労働省に行きました。それを調べてみると資料2 厚生労働省提出資料のPDFにこの表があります。
金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第21回)議事次第
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/market_wg/siryou/20190412.html
この「市場ワーキング・グループ」の議題:高齢社会における金融サービスのあり方 等で人生100年時代に向けて金融面で備えておくべき事項の話。
つまりiDeCoなどで資産形成しましょうという話だったようです。
さらにこのPDFに(出所)総務省「家計調査」(2017年)とあります。こんどは総務省です。
厚生労働省は総務省の資料を参照
調べてみるとどうやら政府統計総合窓口の家計調査の2017(高齢者のいる世帯)世帯主の就業状態別 のエクセルから数字を取っていることがわかりました。
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200561&tstat=000000330001&cycle=7&year=20170&month=0&tclass1=000000330001&tclass2=000000330019&tclass3=000000330020&result_back=1
支出の内訳を確認
上のグラフではいまいちわかりにくかった内訳ですが、総務省のエクセルにちゃんと書いてありました。
数字をひとつづつみていくと食費が月64,444なので1日2人で2,078円使っていることになります。高齢の夫婦2人でこれは高いのか安いのかはわかりませんが節約はできそうです。そのわりに住居費は13,656円と安いですね。持ち家比率が高いのでしょうか?非消費支出という謎の支出は税金と社会保険でしたので必要経費です。
教養娯楽25,077そのほかの消費支出54,028なのでそこをもうちょっと節約できそうです。内訳を見てみましょう
教養娯楽 | 25,077円 |
---|---|
(教養娯楽用耐久財) | 1,132円 |
(教養娯楽用品) | 4,575円 |
(書籍・他の印刷物) | 4,058円 |
(教養娯楽サービス) | 15,312円 |
その他の消費支出 | 54,028円 |
(諸雑費) | 19,432円 |
(こづかい (使途不明)) | 6,097円 |
(交際費) | 27,388円 |
(仕送り金) | 1,111円 |
なんとまぁ。赤字なのに教養娯楽や交際費などです。けっこうゆとりありますね。
グラフのサンプル世帯の金持ち度!
また、エクセルの表のこの世帯ですが平均年齢75.3歳で持ち家比率94.8%。収入は年金の191,880円ぐらいですが預貯金を毎月287,914円引き出しているという世帯で、月々自由に使えるお金が570,215円の世帯でした。なんだよそれ。サラリーマンよりも金持ちの統計じゃないか・・・・
これだけお金が使えたらそりゃ月26万円ぐらいつかうでしょ。それでも30万円はあまるんだから。ちょっとどういう統計なのかほんとうに不明です。
嘘のような表なのでキャプチャ貼っときます。
もうちょっとリアルな統計もあった
総務省「家計調査」(2017年)にはほかにもいろいろなエクセルがあります。
年間収入五分位階級別のエクセルを見ると年収238万円~354万円の世帯(世帯主の平均年齢63.5歳)。(年金19万プラスαで年間240万円とすると)の平均支出額は227万円なので十分年金で生活できているようです。ちなみに交際費は月1万円で食費は57,684円住居費は16,425円でした。
結局なんなのか
資料を当たっていくと年金は19万だけど貯金がたっぷりあって月57万円自由に使える人達の平均支出が26万円。
そのなかの年金は19万、支出が26万円だけを切り取ってお金が足りなくなるからiDeCoなどで資産運用しましょうというのが厚生労働省の資料
その資料を切り取って定年までに2000万円貯めておきましょうというのが金融庁の報告書だったようです。
実際年金の額が大したことなくて、定年後も住宅ローンが残りそうな人とかリタイア後は旅行などで楽しみたい人にとっては年金は足りないというのはみんな知ってたことでこの報告書でもいまさら感はあったのですがあらためて2000万円とか言われるとリアルでいてインパクトも大。炎上商法みたいにばっと拡散したというのがほんとのところでしょうね。